Inocybe dulcamara (Pers.) P. Kumm., Führ. Pilzk. (Zwickau): 79 (1871)

和名(Jananese Name):ザラツキキトマヤタケ (Zaratuki-ki-tomayatake)
Subgenus Inosperma, Section Dulcamarae

Section Dulcamarae: 胞子は平滑、側シスチジアはない、縁シスチジアは薄膜でしばしば連鎖状、柄シスチジアはないか頂部のみ、コルチナがある

Dulcamarae節のアセタケで、神戸市内でも、割と明るい開けた公園などにごく普通に発生する。特に、コンクリートや花こう岩の敷石の近くなどによく見かけるので、石灰質が好きなのかもしれない。全身が茶褐色で、傘に鱗片があり、柄がややささくれる。柄は始め中実だが、のち一部中空(特に上部)となり、縦に2つに切って傘の肉を引っ張ると、ヒダと肉が簡単に分離する。Dulcamarae節のアセタケは、国内でも4種(Ref.1 参照)が確認されており、神戸市内でも複数種の発生を確認しているが、知る限りの日本語の図鑑では、本種を載せたものは「幼菌の会」の図鑑(Ref.4)があるだけで、この節のアセタケに関する日本語の資料はほとんど得られないのが現状。

これまでこれを I. terrigenaではないかと同定していたが、改めて検討した結果 I. dulcamara ではないかと思われた。北大の小林先生にも見ていただいたところ、確かに I. dulcamaraであると確認していただく事ができた。ただ、I. terrigenaも混じっていた可能性は否定できないので、今後とも調査は続けるつもり。実際、I. terrigenaとの区別は容易ではないので、これらの比較についても後述する。

肉眼的特徴:

傘: 1.5-3(-5)cm平らに展開し、しばしば中央が窪む。黄褐色~茶褐色。表面は細かい綿毛状~圧着鱗片。

ヒダ: 直生~湾生で密。縁部はギザギザで、白くふちどる。




柄: 傘と同色。黄褐色の毛羽立つ繊維が全面にあるが、あまり大きくない。頂部のみやや粉状。基部は白色菌糸で覆われる。コルチナの名残を確認できることがあるが、はっきりとしたツバはない。

顕微鏡的特徴:

Spores 胞子: 楕円形~空豆形。8.1-10 x 4.6-5.6 um, Q=1.5-1.9, Ave. 9.3 x 5.1um (Vm:15)
Ref. 1: 7.5-10 x 5.3-6.0 um, Q=1.4-1.7
Ref. 2: 8-10.5(-11) x 5-6(-6.5) um, Ave. 9 x 5-5.5 um
Ref. 3: 7.24-10.4 x 4.8-6.5 um, Q=1.3-1.9 (Vm:151)

Basidia (担子器): 20-28 x 6-7.5 um (Vol.=10)
Ref. 1: 28-34 x 7.5-8.3 um
Ref. 3: 20-30 x 7-9 um

Cheilocystidia (縁シスチジア): 連鎖状(catenate)、end cell = 14-24 x 6-9 um (Vol.=10)
Ref. 1: 全長 < 67.5um, terminal cell 14-30 x 7.5-8.8 um
Ref. 2: (25)30-50 x 11-20 um
Ref. 3: 25-40 x 9-17 um

Pleurocystidia (側シスチジア): なし (absent)

Caulocystidia (柄シスチジア): 頂部のみにある(at the apex of the stipe only)

採集地: 神戸市北区、西区 5~7月、9~11月、シラカシ、コナラの樹下など

References:
1. The taxonomic studies of the genus Inocybe (T. Kobayashi) No. 6
2.Die Gattung Inocybe in Bayern No. 1
3. Fungi of Switzerland Vol. 5, No.14
4. きのこ図鑑 幼菌の会編 P.127

Other Descriptions and Photos:

考察:
Inocybe terrigena:
 Pileus: 21-40mm,
 Spores: Ref.1: 8.0-12.0 x 5.6-7.2um, Q=1.3-1.5
      Ref.3: 9.4-12.7 x 5.5-6.8um, Q=1.6-2.0
 Basidia: 35-53 x 7.7-12.5um (ref.1), 35-50 x 7-9um(Ref.3)
 Ch: often catenate, terminal cells 23-30 x 5.8-9.3 um, narrowly clavate.
 Cau: not observed.

以上より、違いとしては、
I. terrigenaは、外見的には顕著なツバを持ち、柄が大きく逆毛に毛羽立つ。また、傘表皮が鱗片状。I. dulcamaraの傘表皮は細かな綿毛のような繊維で覆われる。検鏡的にはI. terrigenaは、胞子がより大きく、担子器が細長く、柄シスチジアがない。

Herb.: Onishi No.2 & 8, 北大 0810312

Latest update: 2009/2/7