Inocybe hinoana Y. Yukawa & K. Katumoto, Bull. Fac. Agr. Yamaguti Univ. 5: 346. 1954.

和名:サイコクタマアセタケ
Subgenus Inocybium, Section Hinoanae

この種は仮仮同定ですので、同定情報としては用いないで下さい
(本人も、実はタマアセタケの可能性の方が高いだろうとさえ思っていますが、こういう近似種があることのメモ代わりに、あえてI. hinoanaとして記述しています。)

サイコクタマアセタケとタマアセタケはとても近い種で、外見は酷似しているため見分けは大変困難。Ref.1 によると、胞子のサイズと形が両種を分ける大きな決め手。タマアセタケと同様に、アセタケ属としては大きい方で、全身淡黄色で、傘も柄も繊維状である。1954年に新種発表されているが、日本語の図鑑には未掲載。

胞子サイズが、やや大きめだったのと、広楕円形のタイプが多かったので、とりあえず今回は I. hinoana と同定したが、落下胞子でサイズを測っていないので、成熟した胞子の観察では違う結果が出る可能性も十分にある。今後も要調査。

<資料> 香美町村岡、兎和野高原での、兵庫きのこグループ観察合宿にて採取された成菌1個について記載 (Herb. No.13)

肉眼的特徴:

外見的には、タマアセタケなのかサイコクタマアセタケなのかは、全く区別が付かない。触れたり傷ついたところが、赤褐色に変色する。

顕微鏡的特徴:

Spores(胞子): 平滑で、広楕円形~類球形, 6.3-7.9 x 4.7-5.8 um, Q=1.1-1.5。タマアセタケは、その名の通りほとんど球形の胞子を持つ。

Ref. 1: 7-8.3 x 5.0-6.3 um, Q=1.2-1.5
I. sphaerospora(Kob.): 5.5-7.2 x 4.4-6.1 um, Q=1.0-1.4
I. sphaerospora(新菌): 5.5-7.5 x 4.4-6 um

Pleurocystidia(側シスチジア): 60-92 x 11.1-14.2 um、厚膜、狭紡錘形で、内容物が黄褐色、頂部に僅かに結晶を付け、多い。
I. sphaerospora: 64-79 x 11.0-14.5um
I. hinoana: 59-90 x 13.8-18.3 um

Cheilocystidia (縁シスチジア): 55-71 x 10-12um、側シスチジアと似る、多量。棍棒形で薄膜のパラシスチジアも見られる。

I. sphaerospora: 58-84 x 8.7-17.4um




Caulocystidia(柄シスチジア): ごく頂部のみに紡錘形のメチュロイドと、薄膜棍棒形~円筒形のパラシスチジア見られる。

考察:

神戸市北区内でもタマアセタケsp.を採取した事がある(標本無し)ので、今後比較検討したい。

Section Hinoanae検索表:(Ref. 1より)
 1. Spores 5.5-7.2 x 4.4-6.1 um, Q=1.0-1.4, 類球形~卵形 .................................42. I. sphaerospora
 1. Spores 7.0-8.3 x 5.0-6.3 um, Q=1.2-1.5, 広楕円形~類球形 .......................43. I. hinoana

References:
 1. The taxonomic studies of the genus Inocybe (T. Kobayashi) No.43

採集地: 
 1.香美町村岡, 兎和野高原, 2008/09/21 (Herb. No.13)

Latest update: 2008/12/01