Section Inocybe sp. 1

(注)当初は、ハイチャトマヤタケ(Inocybe lanuginella J. E. Lange, Dansk Botanisk Arkiv) としていたが、その後の調査により違うことが判明したため、Sec. Inocybe 不明種に変更する。(2010. 10. 19)

Subgenus Inocybe, Section Inocybe
Section Inocybe: 縁・側・柄シスチジアはメチュロイド。胞子はコブ状。柄シスチジアは頂部のみ豊富。

以下のデータは、2009.7.13 神戸市西区 にて採取された個体に基づいて記載。

肉眼的特徴:

 カサ: 表面ほぼ平滑だが、やや小麟片を生じ、頂部濃色、縁部に白色の皮膜の名残を残す。
 ヒダ: 上生、密。
  : 中実、頂部は粉上、それより下部は表面に白色菌糸まとう。上部はほぼ白色で、下部は傘と同色。幼時は白色のコルチナあり。

2009.10.13
神戸市西区
2009.10.13
神戸市西区
2009.10.13
神戸市西区




2009.10.20
神戸市西区
2009.10.13
神戸市西区
2009.10.13
神戸市西区


顕微鏡的特徴:

Spores (胞子): 8.5-11.1 x 5.2-6.4, Q=1.5-2.0 (Vol.=30)

Basidia (担子器): 21-28 x 7.7-9.4um

Pleurocystidia (側シスチジア): 43-60 x 18-22 um, 先端が尖ったり丸くなる紡錘形、柄を持つ、厚膜、多くは結晶を持つ。

Cheilocystidia: 便腹形や、頂部に突起のある西洋なし形、結晶を持つ。回りに薄膜のparacystidiaが存在する。

Caulocystidia: 頂部にメチュロイドのシスチジアがある。

Spores
胞子
Cheilocystidia
縁シスチジア
Pleulocystidia
側シスチジア

Pleulocystidia
側シスチジア

採集地: 
 2009.7.13 神戸市西区 井吹台東公園 シラカシ樹下
 2009.10.13 同上

考察:
 
特徴的な胞子と、シスチジアの形から、I. lanuginella か、I. curvipesが候補として上がった。縁部に被膜の名残があるなどの傘表皮の様子、柄の上部以外は白色菌糸をまとうことなどの特徴の違いや、シスチジアの比較検討をして、I. lanuginellaと一度は同定した。しかしその後、小林孝人氏に調査を依頼し、結果どちらでもないことが判明したため、Sec. Inocybe 不明種として扱うことに変更した。

References:
 1. The taxonomic studies of the genus Inocybe (T. Kobayashi) No.81
 2.新菌類図鑑 No. 391 (p. 221)

新菌類図鑑の記述:
 傘は径1.5~3㎝,初め円錐状まんじゅう形でのち開いて中高の平らとなる。表面は褐色,灰褐色,帯黄土汚褐色などを呈し(周辺部は淡色)、繊維状のち多少小麟片を生じる。縁部にはしばしば被膜の名残を付着する。ひだは直生し,成熟すれば汚褐色となる。柄は2.5~4cm x 3~4㎜,頂部はほぼ白色で粉上,他の部分は汚褐色で繊維状の微細な条腺がある。胞子は9.5~10.5 x 5.5~6.5μm,角状でこぶ状突起がある。縁および側シスチジアは32~53 x 16~23μm,便腹形,西洋なし形などで厚膜。夏秋の頃,広葉および針葉樹下地上に発生する。分布:日本・ヨーロッパ・北アメリカ・アフリカ(おそらく北半球一帯)。

Sample memo: SO-090713A, SO-091013A

追記1: 当初はI. lanuginellaと同定していたが修正。
追記2: I. curvipes としたが、I. lanuginella に戻した。詳細な比較は、I. curvipesを参照
追記3: どちらでもない不明種と判明したためタイトルを訂正した。

Last update: 2010/10/19