和名 (Japanese name): ヒカゲクロトマヤタケ (Hikage-kurotomayatake)
Subgenus Inocybium,
Section Lilacinae
= Inocybe phaeocomis var.
major (S.W. Peterson) Kuyper
= Inocybe
cincinnata var. major (S. Petersen) Kuyper 1989
傘: 帯灰褐色~
暗 褐色、径15-20mm, 逆毛状の鱗片が毛羽立ち、しばしばひび割れて傘の肉が白く見える。
柄: 上部が帯紫色になるのが大きな特徴。下部が帯褐色。繊維状のささくれで覆われ、基部は類白色。
Spores(胞子): 平滑で、楕円形~アーモンド形 8.5-11.5 x 5.3-6.3um,
Q=1.5-1.9(-2.1) (Vol.=20)
Ref.1 : 8.0-10.3 x 5.5-6.5 um, Q = 1.5-1.7
Cheilocystidia (縁シスチジア):
厚膜のシスチジアは数が少なく、太めの紡錘形~太鼓腹形。一方、殆ど薄膜~少しだけ厚膜の広棍棒状のパラシスチジア(終端細胞:16-33
x 10-16um)が非常に多数分布する。このパラシスチジアは連鎖状でやや薄茶色を呈するか?。
Pleurocystidia(側シスチジア): 厚めの厚膜メチュロイド、紡錘形~狭紡錘形, 頂部に結晶をもつ、
50-68 x 12-18 um (Vm.=12)、やや黄~褐色の内容物を持つ。
Ref. 1: 84-105 x 10.0-13.8 um
Caulocystidia(柄シスチジア):
ごく頂部のみ、紡錘形のメチュロイドと、薄膜で棍棒、円筒形のパラシスチジア多数が混じる。
標本: 香美町村岡 兎和野高原 2008/09/21 (Herb.
No.14)
考察:
本種は、最初 I. cincinnata (クロトマヤタケモドキ)と同定していたのですが、小林孝人先生にアドバイスを頂き、I.
obscura
(ヒカゲクロトマヤタケ)に変更いたしました。両種とも、柄の上部にのみ紫彩があり、外見的特徴が大変似ています。多くの図鑑でも、本種は
I. cincinnata var. cincinnataの変種 (var. major) として扱われているぐらいです。
I. cincinnata とのマクロな違いは、I. cincinnata
は傘系が25mm以下(I. obscuraは最大50mm)で、細長い子実体をしている点のようです。
また、顕微鏡的特徴の違いとしては、縁シスチジアの様子が違うようです。I.
obscuraは、厚膜のメチュロイドタイプのシスチジアが少ししかなく、代わりに薄膜で広棍棒状のパラシスチジアが多数分布し、そのサイズもずっと大き
い。一方 I.
cincinnataは、紡錘形の厚膜シスチジアが多数分布し、その回りに類球形~広棍棒形の薄膜パラシスチジアがある。また、このI.
obscuraの側シスチジアは黄色の内容物を持つものが多い。
他の近縁には、全体が紫彩を帯びる I. griseolilacina がある。しかし、I.
griseolilacinaは柄のCaulocystidiaを欠くとの記述があったため候補からは外したが、可能性は残
る。
クロトマヤタケは、柄に紫彩がなく、胞子はずっと細長い長楕円形なので区別ができる。
memo:
Section Lilacinae検索表:(Ref. 1より)
1. 傘表皮は平行菌糸被。反り返った鱗片はない ・・・・I. amethystina
1. 傘表皮は平行菌糸被ではない。
2. 傘表皮は不規則な菌糸からなる。反り返った鱗片を持ち紫褐色 ・・・ I. griseolilacina
2. 傘表皮は毛状被。
3. 側シスチジアは太鼓腹~紡錘形で頭状の頂部をもつ ・・・ I. ozeensis
3. 側シスチジアは狭円筒形~太鼓腹形で頭状の頂部をもたない
4. 子実体は細長い。側シスチジアは褐色の内容物を持たない ・・・ I. cincinnata
4. 子実体は細長くない。側シスチジアは褐色の内容物を持つ ・・・ I. obscura
採集地:
1. 香美町村岡 兎和野高原 2008/09/21 (Herb. No.14)
Latest update: 2011/10/19