Inocybe substraminipes Kühner, Docums Mycol. 19(no. 74): 26 (1988) sp.
(ザラツキキトマヤタケ節 新産種?)

Subgenus Inosperma, Section Dulcamarae: 胞子は平滑、 側シスチジアはない、 縁シスチジアは薄膜でしばしば連鎖状、柄シスチジアはないか頂部のみ、コルチナがある

本種は、外見的特徴は I. malenconii var. malenconii に大変よく似ているため当初は同種として扱っていた。検鏡的特徴も似ている部分も多いが、有意の差が見られたため、小林孝人先生により、本種ではないかと仮同定された。

データは、2009.7.9 に神戸市西区で採取された10サンプルに基づいて記載。

肉眼的特徴:

 カサ: 径 11-32mm, 半球~凸型へ、ややへそ突、黄褐色、中央から半分まで立ち上がった毛状鱗片。
 ヒダ: 上生、密、縁は白色にふちどる。
  : 22-40x1.3-3.4mm, ほぼ等径、部分的に中空、表面の頂部は白粉状,下部は黄褐色圧状繊維状、縦条線、黄~オリーブ黄。コルチナあり?基部すぐ上に黄色の繊維が環状に付くことが多いように思う。
 肉はクリーム色。柄はクリーム~淡黄色。臭いはほとんどない?
 IS = 16-31

傘の粒状に立ち上がった毛状鱗片と、柄の褐色の繊維状鱗片があり、外見上はヘイワトマヤタケとよく似ているが、子実体が大きめで、また枝の長さに対して傘が大きく、傘もより明るめの褐色をしている。

2008.6.4 神戸市西区室谷 2008.6.4 神戸市西区室谷 2008.6.4 神戸市西区室谷






2009.7.9 神戸市西区
久留主谷公園
2009.7.9 神戸市西区
久留主谷公園
2009.7.9 神戸市西区 久留主谷公園
柄の頂部が粉状


顕微鏡的特徴:

Spores (胞子): 6.9-10.3 x 4.0-5.5um, Avg. 8.4 x 4.8, Q=1.55-1.95, Vm=20。 I. malenconii v. cylindrata と比べて、胞子がやや短く、Q値が小さい(あまり細長くない)。側面からの形はアーモンド型。
Basidia (担子器): 
Pleurocystidia (側シスチジア): なし
Cheilocystidia:  (縁シスチジア)28-40 x 8.9-12.5 um, Vm=10。連鎖状で、終端細胞も I. malenconii v. cylindrata と同様に円筒状に伸びるものもあるが、全体的に短めで太め。
ヒダ実質
Caulocystidia: 頂部のみ。Chに似る。Catenate(鎖状)、 棍棒型~円筒形、薄壁
Pileipellis: 毛状被










Spores
胞子
Cheilocystidia
縁シスチジア
Caulocystidia
柄シスチジア


発生地
 コナラ、シラカシ、アラカシ、アベマキの樹下

採集地: 
 2008.6-7月 神戸市西区室谷  アラカシの樹下
 2009.7.9 神戸市西区室谷、久留主谷公園 コナラ、シラカシ、アベマキ

考察:
 I. dulcamaraと同様に、dulcamarae 節に特徴のある連鎖状のChを持つ。
 外見的には、傘に粒状に立ち上がった鱗片、柄の圧着したような鱗片は、I. malenconii var. cylindrata と大変似通っている。しかし、検鏡的には、胞子、ChやCauのサイズ、形状が有意に異なる。

References:

 Kobayashi T. (2005) Notes on the genus Inocybe of Japan: Ⅲ. Mycoscience 46:186-191

Sample memo: SO-090709C

追記:2010.8.28
小林孝人先生に同定をお願いしていたが、日本新産種のI. substraminipes ではないかとの連絡を頂いた。
それに合わせて、タイトルなどを変更した。
追記:2010.10.19
原記載も手に入ったが、ラテン語なので只今解読中・・・

Last update: 2010/10/19