Inocybe geophylla P. Kumm f. squamosa Yosio Kobayasi, Nagaoa 2:87. 1952

和名(Japanese Name): ササクレシロトマヤタケ (Sasakure-shiro-tomayatake)
Subgenus Inocibium (クロトマヤタケ亜属), Section Tardae

この種はまだ仮同定です。
2008年9月20-21日に、香美町村岡の兎和野高原にて行った兵庫きのこグループの観察合宿で採取された全身が白いアセタケ。傘がささくれ、柄が繊維状になる点、胞子やシスチジアの形や大きさから、ササクレシロトマヤタケと同定した。が、自信は全然ない・・・
その理由は、シスチジアの形が一致するのか分らないのと、殆ど薄膜に近い厚膜だから。なお、胞子の形と大きさはまずまず一致している。もしこの同定が間違いだと、少なくとも日本産既知種には該当種がなさそうだ。

肉眼的特徴:

全身が白色のささくれや菌糸で覆われる。肉はクリーム色。

傘: ややクリームがかった白色。径は、20mm程度、最初饅頭形から、のちやや中高に展開する。表面は逆毛にささくれる。

ヒダ: 上生〜離生し、やや密。

柄: 30 - 40 x 3 - 4 mm、中実、やや基部が太まるがカブラ状にはならない。表面はごく上部のみが粉上で、それより下部は繊維状の毛羽立ちがあり、それが縦のスジとなっているように見える。褐色のコルチナの名残がある。クリーム色の地を、毛羽立ちのある白色菌糸が覆っている感じ。

他の子実体の写真は、Galleryに置いています。

顕微鏡的特徴:

Spores 胞子: 先端があまり尖らない楕円形〜空豆形, 6.8-10.5 x 4.3-5.5 um, Q=1.5-2.1 (vol.=20)
Ref. 1: 7.5-9.5 x 4.5-5.8um, Q=1.1-1.8


Cheilocystidia 縁シスチジア
: 一応厚膜か?でも、ほとんど薄膜に見える。もしこれが薄膜だと、該当する種がなくなってしまう・・・また、基本種のv. geophyllaとは、かなり異なる形をしている。このあたりが迷っている理由。薄膜棍棒形〜円筒形のパラシスチジアが多量にある。


Pleurocystidia 側シスチジア
: 縁シスチジアに似るが、ややスリム。頂部側面に僅かに結晶を付けるものも散在する。
Ref. 1: 39-48 x 13.3-16.3 um


Caulocystidia 柄シスチジア:
頂部のみで、円筒形、類球形、棍棒形など、色々な形をしている。薄膜か?

考察:

外観から、ササクレシロトマヤタケの名前がすぐに挙がったが、I. geophylla v. geophyllaとはシスチジアの形がかなり異なる上に、ほとんど薄膜に見える事や、手元の本種の情報が少ないため同定の決め手を欠いている状況。
白いアセタケは、本種と、本種の基本種(v. geophylla) の他に、I. umbratica (シロニセトマヤタケ)、I. phaeodisca v. geophylloides (シロトマヤタケモドキ)、 I. whitei (I. pudica のsynonimとするには異論が出ている)などが知られている。そのうち、こぶ状の胞子を持つのはシロニセトマヤタケのみで、他はいずれも平滑な胞子を持つ。

そのうちシロトマヤタケモドキも傘にささくれがあるが、通常全身は純白色ではなく傘の中心が淡褐色になる。また、胞子は、先端が尖るアーモンド形になり、大きさもやや本種よりも大きく(6.5-12 x 5-7um, average 8.2 x 5.6um, Q=1.2-1.6(-1.9))、シスチジアがより細長い(Pl: 37-68 x 11.3-16.8um) ことなどで別種と判断した。(だが、自信なし・・・) 
詳しい方のヘルプをお願いします。

('08/12/3)追記: お借りした青木図版を調べたところ、青木氏がササクレシロトマヤタケとして記載している種(図版No.1149)と、肉眼的、顕微鏡的特徴がいずれも非常に一致することが分かった。少なくとも青木氏がササクレシロトマヤタケと同定した種とは同種と思われる。ちょっと安心・・・でも、青木氏も原記載と検鏡的特徴は一致しない部分が多いと書いている・・・やはり、確定とはいかなさそうだ。

採集地: 香美町村岡 兎和野高原 2008/09/21, 松と広葉樹の混成林内地上

Reference:
1. The taxonomic studies of the genus Inocybe (T. Kobayashi) No.58
2. 日本きのこ図版(青木図版) No. 1149

Latest update: 2008/12/3